2010年3月29日、アフィリエイト業界に大きなニュースが駆け巡りました。リンクシェア・ジャパン株式会社と株式会社トラフィックゲートの合併です。三井物産の子会社であるリンクシェア・ジャパン株式会社と、楽天の完全子会社である株式会社トラフィックゲートが2010年5月1日付けで合併し、新生リンクシェア・ジャパンとしてスタートするというこのニュースは、アフィリエイト業界内外をにぎわしました。
2010年3月29日のリンクシェア・ジャパンのニュースリリースによると、合併によって今後はリンクシェア・ジャパンとトラフィックゲートがそれぞれ提供するプラットフォームの統合、アフィリエイト・パートナーの共同開拓、アフィリエイト・パートナーのID共通化によるシームレスなサービス等、様々な付加価値向上策を実現していくとの事です。
この衝撃の合併から半年後、新生リンクシェア・ジャパン株式会社は品川シーサイドにある楽天株式会社の本社ビルに移転し、11月25日には代表取締役共同社長として新たに楽天株式会社執行役員の小林司氏が就任されました。
取締役共同社長は津田圭吾氏が引き続き担当され、取締役副社長には神野潤一氏が新たに就任されたことで、新体制でのリンクシェア運営となります。 |
リンクシェア・ジャパン津田共同社長 |
2010年春から急激な変化を見せているリンクシェア・ジャパン株式会社。アフィリエイトサイト運営者の方や、広告主担当者はもちろん、アフィリエイト業界内外の多くの関係者が、これからのリンクシェアの動向と変化に注目しています。そこで、当サイト「アフィリエイトSOGO.COM」編集部では、新生リンクシェア誕生以前から取締役共同社長として手腕を振るわれてきた津田圭吾氏に、緊急インタビュー取材を実施させて頂きました。
快く取材に応じて頂けた津田共同社長の口から、新生リンクシェア・ジャパンが誕生した事で何が変わったのか、そしてこれからどうなっていくのか、2011年のアフィリエイト展望と合わせじっくりお話頂く事ができました。 リンクシェアやトラフィックゲート、楽天アフィリエイトを利用されている方にとって参考になる情報が盛りだくさんです。
それでは、新生リンクシェア・ジャパン特別インタビューをお届けさせて頂きます。
KASAI(以下K): ---お忙しい所、インタビュー取材のお時間を取って頂き誠にありがとうございます。本日はよろしくお願い致します。
リンクシェア津田共同社長(以下、津田): こちらこそよろしくお願い致します。
K: ---まず、簡単にで結構ですので、合併された新生リンクシェア・ジャパンが展開しているアフィリエイトサービスについて、簡単にご説明いただけますでしょうか?
津田: はい。まず2010年5月1日に、旧リンクシェア・ジャパンとトラフィックゲート社が合併をしまして、ひとつの会社として運営を開始しました。ポイントとして、旧トラフィックゲート社は申込系や登録系などの「リード系」と呼ばれるアフィリエイト案件を中心に事業を展開してきた点と、楽天市場の巨大なアフィリエイトサービスを代行してきた点という、2つの点が挙げられます。
一方リンクシェアの場合は、商品の販売を行う物販サイト、いわゆる「EC系」を中心に運営を行ってきたというのが特長です。トラフィックゲートとリンクシェアが一緒になることで、それぞれの強い分野が補完的な関係を築けるというのが、今回の合併の大きな趣旨であったと言うのをお伝えしたいと思います。
K: ---日本のアフィリエイト業界史上、大手ASPの合併というのは初めての事だったので驚かれた方も多いと思います。楽天アフィリエイトも入ってくるのが大きいですね。
津田: トラフィックゲートで楽天アフィリエイトを運営しているというのは、我々リンクシェア・ネットワークとしても大きなシナジー効果を生み出しています。2009年度ですが、流通総額はリンクシェア・ネットワークで約1000億円、楽天アフィリエイト・ネットワークでは約3000億円、合わせて4000億円となります。また取り扱っている商品の数もリンクシェア・ネットワークが1,800万点、楽天が5,200万と、合わせて7,000万点にものぼります。物販系アフィリエイト・ネットワークとしての流通規模が、合併した新生リンクシェア・ジャパンでは国内最大規模、取扱額ナンバーワンというのが、大きな特長として挙げられます。
一方で、リンクシェアに登録頂いているアフィリエイト・サイトの40万サイトと、TGネットワークの26万サイト、そして楽天アフィリエイト・ネットワークは累計利用者数に相当する500万サイトになります。この500万サイトものアフィリエイトサイトが、リンクシェア・ネットワークと統合する形になるので、アフィリエイト・ネットワークの規模としても最大規模となってきます。
K: ---リンクシェアだけ、もしくはトラフィックゲートだけ使ってきた、というアフィリエイターさんにとっても変化が起こってきそうですね。
津田: はい。先ほどもお話させて頂いた通り、トラフィックゲートの「リード系」、リンクシェアの「EC系」という組み合わせは、アフィリエイトサイト運営者の皆さまにとっても大きなメリットを生み出すと感じています。アフィリエイト・パートナーさんが運営されるサイトにはカテゴリーを特化された媒体も多いのですが、例えば通常はEC案件をメインに紹介されているアフィリエイト・パートナーさんが、商品購入にオススメなクレジットカードなどの金融系のアフィリエイトをプラスで取り組んだらより多くの収益が発生する、といった単純に掲載幅を広げるだけでも相乗効果はあると思っています。
さらに、楽天アフィリエイトからのサイト数の多さが両ネットワークに加味されてくることで、ECとリードに特化したアフィリエイト・ネットワークも、より大きな規模に膨らませていきたいと思っています。合併して半年ですが、リンクシェアとトラフィックゲートの両ネットワークの会員にいかに両サービスを同時に使ってもらえるかというところに焦点を当てておりまして、短期的な施策としてはTGクライアントとLSクライアントの合同キャンペーンを行っています。
TGサービスに登録しているアフィリエイト・パートナーさんが、LSに登録し、さらに初オーダーを獲得すると報酬をお支払いする事で、リンクシェアへの登録も促していくというキャンペーンです。このような両方のサービスをまたいだ企画を今後も実施していくことで、リンクシェアとトラフィックゲートの両方を活性化していきたいと考えています。
K: ---2つのASPの壁を取り払い、アフィリエイターが自由に行き来できるイメージなんですね。現在はリンクシェアとトラフィックゲート、2つ別々のASPという位置づけですが、今後どうなっていくのでしょうか?
津田: 今現時点では、システムが別々に動いていて、両サービスにそれぞれ登録し、それぞれのアフィリエイトに取り組んで頂く必要があります。リンクシェアとトラフィックゲートのシステム基盤を統合する前に、やはり先ほどのような両ASPによるキャンペーンを行い、まずは2つのサービスを使ってもらうという仕組み作りを今、始めているところです。
またリンクシェア、トラフィックゲート共にアフィリエイト業界ではトップクラスの不正対策を行っているのも特徴です。「DO THE RIGHT THING!」というポリシーのもと、リンクシェアではアダルトサイトや反社会的サイトなど、インターネット利用者に悪影響を及ぼすようなサイトをアフィリエイトサイトとして参加させることを一切認めていません。 サイトの登録時に厳正な審査を行う他、定期的にサイトパトロールを行い、内容の健全性の確認に努めております。参加ポリシーはリンクシェアとトラフィックゲートはかなり近く、今後も不正対策に力を入れていきます。 |
不正対策に徹底的に取り組んでいます |
K: ---アフィリエイトサービスの「質」という点で共通する部分があったのですね。そう言えば思い出したんですが、5月のリンクシェア大見本市にもトラフィックゲートさんや楽天フィリエイトさんがブースを出展されてましたよね?
津田: はい。リンクシェア大見本市は毎年開催してきておりますが、今年2011年は見本市のやり方も今までと違った形で、より広告主さんやアフィリエイト・パートナーさんに喜んで頂ける形にしていきたいと思っています。見本市でトラフィックゲートや楽天アフィリエイトと言う要素をどういった形で取り入れていくか、参加頂くアフィリエイト・パートナーさんに3つのサービスの一体感を、よりリアルに体感してもらえる場に、持っていけるかというのを今から考えています。
また取り組みという意味では、トラフィックゲートではアフィリエイト・パートナーさんが自ら商品購入やサービス申し込みを行う事で成果報酬を獲得できる「セルフアフィリエイト」というのをやっています。これはリンクシェアには無かったのですが、TGアフィリエイトの仕組みを使って、LSセルフアフィリエイトも出来る形に仕組みを整えております。近日中にはリリースしていきたいと思っています。
それから長いスパンで考えますと、楽天アフィリエイトも含めた3つのアフィリエイト・サービスをシームレスに使ってもらえるように、システム部分を共通化した管理画面を実装できるよう予定しています。管理画面の簡単な切り替えで、各アフィリエイト・サービスが行き来できる形に持って行きたいと思っています。
K: ---サービス面やシステム面など、合併による変化はすでに色々と出てきているのですね。ちなみに、楽天アフィリエイト利用者は、楽天ブログを使われている方が多いと思います。現状、楽天ブログには楽天アフィリエイトの広告しか載せられないと思うのですが、将来的にはリンクシェアさんやトラフィックゲートさんの広告も楽天ブログに載せられるようになるのでしょうか?
津田: 楽天とのシナジー効果は楽天ブログや楽天アフィリエイトという範囲ではなく、技術(テクノロジー)面も含めてシナジーを最大化できるかを検討しています。
K: ---リンクシェア、トラフィックゲート、楽天アフィリエイトの3サービスが今後どう近づいていくか、これは2011年の注目点の1つになりそうですね。では新生リンクシェア・ジャパンとして、2011年現在、こういったアフィリエイト企画やサービスがあるので、アフィリエイターさんにはぜひ活用してもらいたい、と思われる物は何かありますか?
津田: 一昨年2009年の11月から、リンクシェア・サービスの方で、「BentoBox™」というプロジェクトというのをやっています。まずは、一昨年10月に大阪の見本市でアナウンスして、いろんなコンテストを積み重ねながら、この1年間アプリ数を増やすということで頑張ってきました。
リンクシェアが自社で開発したアプリ、第三者と企業対企業のアライアンスで開発したアプリ、そして個人のアフィリエイト・パートナーさんが独自で開発下さったアプリの3種類合わせて、今現在だいたい100種類のアプリがあります。 |
BentoBoxをご活用ください |
リンクシェアとトラフィックゲートでは、分野がそれぞれ別のところにあるのですが、技術プラットホームのシステム統一化を図っていく上で、このBentoBox™についてもトラフィックゲートのAPIを使って第三者の方が参加できるようBentoBox™の仕組みを横展開していきたいと思っています。
BentoBox™はアプリ数も集まってきましたので、ようやく多くのアフィリエイト・パートナーさんがBentoBox™サイトに来ていただいて、自分のコンテンツや分野に合ったアプリを見つけていただける段階になったかなと思っています。さらにトラフィックゲートのリード系のお客様にも使っていただけるようなツールを積み上げていきます。
BentoBox™のツールは、単純に貼るだけというアフィリエイト初心者の方にもお使いいただけるサービスになっているので、アフィリエイトを始めて間もない方には、例えばリンクシェアの物販系アプリと、トラフィックゲートのリード系アプリを貼るだけでOK、というところからまずスタートしていただくのも良いのではと思っています。このプロジェクトを両者共通のサービスとしてこれからは力を入れていきます。
K: ---BentoBox™のアプリはすごく多いのですが、これが人気だというアプリはあるのでしょうか?
津田: 「tweetコレクター」と「ブランデリ(BRANDELI)マニア」、そして「セール&クーポンサーチ」系アプリの3つが今、多くのアフィリエイト・パートナーさんに利用されています。リアルタイムで情報が変わるというのが1つのポイントになるので、ブランデリさんやセール&クーポンサーチなど、パーツも価格情報や商品情報がタイムリーに入れ替わるという点がユーザーさんに受けていて、それがアフィリエイト・パートナーさんにとっても使い勝手があるということなのでしょう。
タイムリーな情報を表示させるコンテンツは、BentoBox™にフィットするということが、この結果からもわかりました。個人アフィリエイト・パートナーさんが作って下さった「ブランデリ(BRANDELI)マニア」は、ブランデリさんからもお褒めの言葉を頂いています。
▽ブランデリ(BRANDELI)マニア表示例▽
K: ---アフィリエイター側もできるだけ時短というか、作業にかかる時間を減らし、空いた時間をコンテンツ作成や情報収集に使いたいと思っています。BentoBox™でピッタリくるアプリをうまく活用できれば、それだけアフィリエイトに投資できる時間が増えるでしょうね。
津田: まだ今はBentoBox™アプリが探しにくい状態なので、ここは改善ポイントだと思っています。アプリを探す人のそれぞれの切り口ですぐに検索できるようにするのが、我々としても今後注力していく課題です。
それと、リンクシェアの特徴的なサービスとして、1円からのアフィリエイト報酬支払い、そしてECサイトさんとアフィリエイト・パートナーさんとの直接コミュニケーションを積極的にサポートしている、という点も挙げられます。イベントとしても大見本市のような大きなイベントの他に、カテゴリーを絞ったECサイトさんとアフィリエイト・パートナーさんが中身の濃い情報交換を行えるテーマ特化型イベントも開催頻度を増やしてきました。
広告主さん主催のサロンというイベントもあります。トラフィックゲートでも、技術的な部分に加えて、リアルイベントの部分も共有できるような基盤を整えていく予定です。
K: ---オフライン企画の内容や幅が広がって行くのは良いですね。先ほど見本市のやり方を変えていくことを検討しているとお伺いしましたが、今後こういうサービスを提供していきたい、こういう企画をしていきたいなど、何か予定されている事がありましたら教えて頂けますでしょうか。
津田: やはりカテゴリー特化型イベントの反響が非常に高く、大見本市をどういうふうに位置づけるか、初心者の方のニーズと上級者の方のニーズの両方を充たす方法は無いかということが大きな課題として挙がっています。二部構成にすることもアイデアとして上がっています。
また、やはり地方でのアフィリエイト強化ということが課題になっています。地方の勉強会やセミナーは、KASAIさんにご協力頂いて開催してまいりましたが、今後はやはり弊社としてももう少し積極的に地方企画の強化を図りたいと思っています。
K: ---地方のアフィリエイトはこれからより一層大切にしていかなければならない点だと思いますので、今後のリンクシェア地方企画に期待しています。ちなみに、オンラインの方で何かキャンペーンやサービスリリースなどは予定されているのでしょうか?
津田: 新サービスとまではまだ行かないのですが、世の中の流れとしてスマートフォンやiPad関連といった新しいプラットフォームが出てきていますので、そうした新メディアへの対応を早急に進めていかなければならないと思っています。
今までの携帯電話とは違い、表現力が圧倒的に上がってきています。弊社のお客様でもスマートフォン対応やiPad対応を始められているので、新しいプラットフォームでもアフィリエイトで何ができるかが、今後の課題となっています。 |
ASPを超えたキャンペーン企画にご期待下さい |
トラフィックゲートの方では、iPhone向けアドネットワーク「TG
Ad for iPhone」を2009年から提供していますので、リンクシェアの広告主にもこのサービスを紹介しようという取り組みを行っていきます。他社ASPに先駆けてiPhone向けのネットワークを持っている事が強みですね。
K: ---今後はスマートフォンがどれだけアフィリエイト業界に影響を与えていくかというのが個人的にも楽しみな点です。それでは、最後に今回のインタビュー記事を読まれている方に向けて、ぜひメッセージをお願いします。
津田: リンクシェアは合併して新会社になりましたが、もともとの企業理念である『結』の精神、個人、企業を問わず共感から生まれる良いパートナーシップの構築をサポートしていく、ということを企業ミッションとして掲げており、アフィリエイト・パートナーさんから顔の見えるASPを目指していきたいという思いは今までと変わりなくあります。
合併して規模が大きくなったということは大きなメリットですので、リンクシェアが大切にしてきた元々の企業理念・精神は忘れずに、より大きなアフィリエイト・ネットワークに成長していきたいと思っていますので、これからもご愛好をよろしくお願い致します。
K: ---インタビューは以上となります。長時間の取材にご対応いただき、どうもありがとうございました。
津田: こちらこそありがとうございました。
合併に引っ越しに新役員就任にと、リンクシェア・ジャパン株式会社はまさに激動の時期にあると言っても過言ではないと思います。そんなお忙しい時期に緊急インタビュー取材を受けて頂けた事、編集部一同大変ありがたく思っております。 本社が楽天タワーに移転し、新社長に楽天株式会社執行役員の小林司氏が就任された事からも分かる通り、これからのリンクシェア社はより楽天色が強まってくる事が予想されます。ただそんな変化の中でも、津田社長がもともとの企業理念である『結』の精神を大切にしていく、というメッセージを力強く感じました。 2011年は間違いなくリンクシェア・ジャパン社にとっても、また他のASPにとっても競争と試練の一年になります。その激動の年、リンクシェア・トラフィックゲート・楽天アフィリエイトの3つのアフィリエイト・サービスがどう展開されていくか、これはアフィリエイト業界内外の関係者が最も注目している点の1つでもあります。 |
リンクシェア・ジャパンが入る品川シーサイド楽天タワー |
規模の大きさや国際的なブランド力といった楽天の良い部分と、ベストASPを連続受賞してきた事からも分かるようにリンクシェアが長年培ってきた「信頼」という大きな価値が、これからどういったシナジーを生み出していくのか。リンクシェアが三井物産の一室で産声を上げた誕生当初より移り変わりを見てきている編集長KASAIにとって、これからの変化を興味深く注視したいと思います。
最後になりますが改めて、津田社長、そしてリンクシェアの皆さん、突然の取材依頼にも関わらず、インタビュー御快諾いただき誠にありがとうございました。アフィリエイト業界内だけではなく、アフィリエイト業界外からの信頼や評価を得られるような、そんな取り組みをこれからも進めていっていただければ幸いです。